現業についてのスキルアップには余念がないけれど、IoTに縁がなかったという和泉さん。ラズパイを触るのも初めてだった、というエンジニアが語る、フィジカルなデバイスを自分で作ることの魅力。
受託開発における新規技術の習得コストについての考え方を経営者目線で語ってくださった石黒社長のお話など、非常に示唆に富んだインタビューになりました。
若手、新人の社内教育について悩む経営者のみなさんにとっても参考になる事例です。
■受講した方の紹介
インタビューにご協力いただいた株式会社ストーンシステム様について簡単にご紹介します。株式会社ストーンシステムは金融システムの受託開発、スマホアプリ開発から自社開発の音楽関連アプリまで幅広い分野の開発経験をもつ会社です。
自他共認める技術オタクである生粋のエンジニア社長、石黒さんのもとで、のびのびとエンジニアの方々が働いている様子がお話を聞く中から伝わってきました。
石黒尚久社長
プログラミング言語オタクで最近はHaskellにハマリ中。
所有しているハードウェアはIchigo JamからPower Mac(メモリ128G)までというエンジニア社長。
和泉邦明さん
新卒五年目でスマホアプリ開発からバックエンドまで設計、プロマネ、開発保守をこなせるマルチプレイヤー。
開発言語はiOS開発はobjective CとSwift 、android開発はKotlinとjava 。webシステムはPHPと、こちらもマルチ。
長島最功さん
ストーンシステムの元執行役員。現在は独立し外からストーンシステムを支えている。
在籍当時から業務とともに後進の育成にも興味があり、若手の興味をそそりそうな教材としてIoTエンジニア養成キットを導入した。
■インタビュー
新人教育に楽しさは最重要 プログラミングの楽しさを感じられるキット
―――IoTエンジニア養成キットを採用された理由について教えてください。
石黒:IoTはキーワードとして知っておきたかったところで、長島さんが勧めてきてくれたので導入してみました。
長島:IoTは直近の仕事で使う、というようなものではなかったのですが、お客さんの要望がIoTに徐々に近づいてきた感触が有ったんですよね。
それに加えて、最近は会社として新人の採用が増えていて、彼らの教育をしていく上で、興味をひくような分野なら楽しんで勉強してくれるんじゃないかと思ったんです。
学ぶ上で楽しさは重要です。特に新人にとっては最初は楽しいというのは大事。
普通のプログラミングだと「本を読んで、プログラムが動くのをみて、楽しい。」と思える感性がないと大変じゃないですか。
ただ、IoTだと、それ以外の楽しさがある。このキットはいろんなプログラミングの楽しさを感じてもらえるものだとおもいます。
多人数ですすめることで刺激しあえるラーニングスタイルも魅力
―――どのような環境ですすめられているのですか。
和泉:長島さんと併せて4人組でグループで発表しあう、勉強会のような形ですすめています。
長島:先行して和泉さんが体験して、「こういうふうなことができるよ」と発表するような感じです。
和泉:最近はコロナの影響なども有って持ち帰りもしてますが、普段は会社でドキュメントを見ながら進めて、参加者にアドバイスしたり情報共有していました。
参加者全員が一通りキットをやったら、次のステップは「僕ならこう変える」みたいなことを意見交換しようとおもってます。
石黒:こういう風に教え合ったり、影響し合えるのがいいところですね。
開発はチーム単位ですから、プロジェクトチームの中でこういう教育ツールを使って影響し合えるのがよいとおもいます。
実際にモノがある、フィジカルな存在の持つ魅力と感動
―――プログラムをすすめてみてどのような印象をうけましたか?
和泉:やはり1ヶ月目は一番印象が強かったのを覚えてます。環境センサーに手をかざしたり、ライトを当てたりするという現実の状況とWebで見られるグラフがリンクしてる様子にすごく感動したのを覚えています。
あと、自分が作ったハードウェアがモノとして出来上がった、制御できた。という嬉しさが強かったです。
私達のようなWeb系のエンジニアにとっては物理的なものが存在して、ディスプレイ上だけの変化にとどまらない動きを見るのはやはり刺激的でした。
―――たしかに私も初めてLEDを点灯させたときには興奮しましたね。さらにカメラ画像の処理やAIなどに踏み込んだ3ヶ月目についてはいかがでしたか?
和泉:3ヶ月目は最初の2ヶ月とはまた違った興奮が有りましたね。それまではどちらかと言うと言われたとおりに設定をしている感じだったんですが、ノイズ除去やAIによる人物検知などに細かいチューニングや演算内容の改変要素があったので、「プログラムしてる」「ハイレベルなことをやってる」という実感が有りました。
4ヶ月目はまだ、AWSのセッティングなどについてのドキュメントを読んで下準備をしてる段階なので感想を言える段階ではないですが。
―――AWSの設定が終わったら世界が一気に広がるので楽しみにしててください。
感想をまとめるとしたら、やはりモノの存在ややリアルな世界とのつながりへの興奮が大きかったのでしょうか。
和泉:そうですね。手に触れられるものがある。という「やりがい」は大きいですね。
長島:若手が興味を持ちそうな分野を楽しんで勉強してほしいと思っているのでこの反応は嬉しいですね。
ドキュメントの完成度は感動モノ
―――IoT初体験なだけに感動がひとしおだったようですね。ではそういった初めてのシーンで躓いた点などはありませんでしたか?
和泉:やはり一番最初のセッティングは難しかったですね。前提となる知識がないので何が書いてあるのかよくわからずラズパイの設定にも苦戦しました。
ドキュメントをよく見てなくてインストールするOSのバージョンを間違えてしまってしまったり、ネットワークにつながらなかったり。社内のWi-Fi環境との相性もありました。
―――ツクレルのスタッフも同じようなところで躓いてましたね。現役バリバリのエンジニアでもやはり初めて触るものには苦戦するものみたいです。
ところで弊社のサービスはサポートに定評があるのですが、そういったところは活用されましたか? 改善の要望など伺えると嬉しいです。
和泉:サポートに質問するほどのものはなく、他の人がした質問の回答を見ていたら解決しました。
特に環境構築のところなどは集積されたQ&Aが参考になりましたね。
もし強いていうならサポートの質問事項、FAQが各月のコンテンツごとにまとめてあるとありがたいかもしれません。
でもそもそもドキュメントが充実してるじゃないですか。Macの場合はこう、とか環境ごとに事細かに書いてあって「コピペするだけでうまくいく」というレベルでした。ドキュメント見てるだけで進められたのでサポートを活用するほどのことにはなりませんでした。
―――弊社のキットが選ばれる理由としてサポートを上げる方が多いのですが、ドキュメントの方もご評価いただけてたようで嬉しいです。
和泉:ラズパイは知ってたけど、食わず嫌いで触ろうとはあまり思ってなかったんです。長島さんが選んだこのキットがなかったらすすんで勉強しようとは思わなかったかもしれません。
ただ、IoTの環境構築系とかのサイトとかは見ていて、そういうサイトでは重要な手順が書かれていない。というようなことも有ったのでステップを細かく書いてあるキットで勉強できて、満足は高いですね。
ドキュメントにここまで書いてくれるのか! と感動するレベルですよ。
長島:実際このキットを始めようと思ったきっかけは、若手に楽しんで勉強してほしいというところにあり、ある意味おもちゃを与えた感じでした。
和泉さんがこういう顔で楽しんでくれてるのをみれたので安心しました。
受託のジレンマを打ち破れ。エンジニアを楽しませる先行投資
―――弊社のキットはかなりの額になったと思うのですが、いいおもちゃになったでしょうか。
石黒:先行投資として価値が有ったな。と思いますね。ツクレルのサイトの方をみて、AIの方のキットもやってみたいと思いましたよ。
私、結構プログラム言語オタクだったり、新しい言語や技術には興味があるんです。
ただ、弊社は今年で30周年です。
受託開発の部門に関しては昔からのお客様とのお付き合いの中でビジネスをやっています。
仕事のスタイルとしては「お客様が新しいことに興味を持たれて、ご要望が出てから一緒にやり始める」という感じが多いんです。
―――社長さんの趣味とは別に会社の運営上、現業にない要素を習得するコストを考えると、必ずしもお客様へのメリットにならない場合もありますからね。受託事業を続ける上で難しい問題だと思います。
石黒:はい。しかし、AIにしろIoTにしろ、どんどん新しい技術は出てきます。
この動き方だと、新しいこと、今回だとIoTに詳しい別の会社を開発先に選ばれてしまう可能性があるんですよね。
―――ジレンマですね。今回このキットを導入されたということは、コストを割いてでも新しい分野の技術を習得する価値があるとお考えになられたからでしょうか。
石黒:この会社は私自身がエンジニアとして起業しました。
エンジニアにはメモリ盛り盛りのハイスペックマシンを与えていますし、エンジニアが働きやすい組織になっているとおもいます。
今回、ハードウェアと同様に、お金をかけて新しい分野についての社員教育をやってみたわけですが、その価値は十分にあったと思いますね。
和泉さんの話してる姿を見て、キットからいい刺激をうけているのが伝わってきましたから。
現実的にはキットに含まれている技術だけで受託で使えるようなサービスを作る、というのは難しいでしょう。でも、エンジニアがこのキットを通して「IoTではこういうことができる」というインデックスを作れれば自分たちで調べて技術を深堀りしていくことができますからね。
―――技術の幅が広がれば、自力で深堀りができる。深堀りができれば、新たなお仕事の提案もできる。というわけですね。
IoTエンジニア養成キットはこのような方にオススメです
―――では、最後にこのキットをすすめたい方をあげていただけますか?
和泉:私は若手社員、特に2,3年目のエンジニアにすすめたいですね。1年目だと社内業務になれるのに精一杯でしょうから、2,3年目の新しいものを勉強したい。というタイミングで勧めたいです。
長島:わたしもやはり新人教育用途ですね。和泉さんの話を聞いててもわかりますが、楽しんでできるキットです。やはり物があると楽しさが倍増しますから。エンジニアリング自体への興味が強くなれば伸びが変わってくると思います。
―――なるほど。若手社員が新しい技術を楽しんで身につけていけることが何よりも大切。という姿勢が伝わってきました。エンジニアファーストな会社なだけでなく「エンジニアになるためには」というところから考えているのが素敵ですね。
きょうは貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
■まとめ
株式会社ストーンシステムさんでは受託開発を主力とする会社が陥りがちなジレンマを乗り越える最初の一歩として、IoTエンジニア養成キットのもつ「形あるものをつくる楽しさ」をうまく活用していただけたようです。
社長の石黒さんが醸し出すエンジニアマインドと、そこに端を発した企業文化が、「楽しさ」をエンジンとしたエンジニア育成という方向にうまく舵を切ることにつながったのだと思います。
弊社のIoTエンジニア養成キットがその一助になってくれたのなら嬉しい限りです。
多くの会社が似たような悩みを抱えていると思いますが、その解決のヒントが今回のインタビューから読み取ることができるのではないかと思います。
その際にIoTエンジニア養成キットの導入をご検討いただけるようでしたら幸いです。
聞き手:杉田知至/書き手:梅田正人
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