そんな2020年をRaspberry Pi(以下ラズパイ)とともに振り返り、2021年のことも考えてみます。まずは2020年、Raspberry Pi周りの10大ニュースを紹介。
1. エンタープライズ企業における採用例
NTTとIPAの「シン・テレワークシステム」はラズパイだった。1ユーザーあたり月14円で運用可能 – PC Watchより。これまでプロトタイプなどでの利用が多かったラズパイのイメージが一変するようなニュースです。リモートワークがはじまってすぐにリリースされたシン・テレワークシステムを支えているのはラズパイとのことです。なお、開発者のひとりである登大遊氏はSoftEtherの開発者としてもよく知られています。
2. コロナ禍で活躍するRaspberry Pi
コロナ禍にあって、ラズパイを用いたプロジェクトが数多く立ち上がりました。一例としてRaspberry Pi、人工呼吸器への利用で需要増見込む。Pi Zeroは第2四半期25万台生産の予定 – Engadget 日本版があります。ほかにもコロナウイルスに屈しない。COVID-19と闘うRaspberry Pi(ラズパイ)プロジェクトまとめ – ツクレル – 自分で自分自身のためにプログラミングしようにコロナ関連のラズパイプロジェクトを取り上げていますのでぜひご覧ください。
また、Raspberry Piでは新型コロナ対応で自宅待機の子どもを支援——Raspberry Pi財団がオンライン学習環境を提供 | fabcrossとしてオンライン学習環境を提供しています。手軽に手に入るコンピュータであり、インターネットに接続することで子供たちが学習する環境としては最適ではないでしょうか。
3. Raspberry Pi 4のバージョンアップ
Raspberry Pi 4は2019年末に日本でも発売開始しましたが、2月にメモリー容量が2倍に、さらに10月には8GB版も登場しています。ちょっとしたノートPCであればメモリが8GBというのもよくある話なので、それに匹敵するスペックになってきたということでしょう。
4. 64bit対応とRaspberry Pi OSへの名称変更
これまでRaspbianとして知られてきた公式OSがRaspberry Pi OSに名称変更しました。また、64bitも提供開始しています(まだベータ用です)。
5. クラウド
ラズパイの公式サイトがラズパイで運用されているのは元々知られていましたが、いまなおRaspberry Pi 4を18台で運用されているというのは驚きです。あのWebサイトを支えられるくらいなので、十分な性能があると言えるでしょう。また、AWSではAmazon ECS Anywhereを発表しました。コンテナを利用することでラズパイでもAWS互換のコンテナ環境が構築できます。
6. みんなのラズパイコンテスト 2020が開催
みんなのラズパイコンテストは2014年から行われている日経Linuxと日経ソフトウェア主催のラズパイコンテストです。2020年も行われ、面白い作品が多数作られています。
7. 新しく登場したRaspberry Piシリーズ
ラズパイというとマイコンのボードコンピュータを思い浮かべますが、ほかにもシリーズがあります。まずキーボード型のRaspberry Pi 400です。キーボードの中に埋め込んでしまうと言う発想がラズパイらしいといえるでしょう。また、組み込み系に特化したRaspberry Pi Compute Module 4があります。こちらはまだ未発売ですが、3は4000円程度となっています。
8. 付属品も続々
公式からも面白い付属品が登場しています。
- Raspberry Piが過熱防止用の公式ケース向け空冷ファンをリリース | TechCrunch Japan
- レンズ交換可能な新型Piカメラ——CSマウント対応カメラモジュール「Raspberry Pi High Quality Camera」 | fabcross
- Raspberry Pi keyboards for Japan are here! – Raspberry Pi
非公式ですが、ラズパイを用いた製品も続々登場しています。こちらはほんの一例です。
- 6.8型液晶ディスプレーも搭載、ラズパイ3対応キーボード一体型PC「DevTerm」が2021年4月発売 | TechCrunch Japan
- 懐かしの「PC-8001」が手のひらサイズに!『ラリーX』などのゲームも遊べるぞ | &GP
9. 公式OSイメージ作成ツールの登場
ラズパイの難点といえば最初のイメージファイルからSDカードの作成だったと思いますが、公式のイメージライターRaspberry Pi Imagerが登場したことで世界が一変しました。これでセットアップの障壁が一気に下がったかと思います。
10. Raspberry Pi OS以外も利用可能
公式のRaspberry Pi OS以外のOSも今年になってリリースが相次いでいます。特に注目したいのがUbuntu 20.04 LTSでしょう。LTSとあって2025年まで利用できるメリットはかなり大きいといえます。変わり種としてはAndroid 11が動作したというニュースもあります。
なお、AppleがCPUをIntelからARMに変更すると発表したことで、ラズパイ界隈がざわついています。
2021年の予想(という名の願望)
2020年、ニュースが多かったラズパイ界隈ですが、2021年はどうなるでしょうか。まず採用事例は2020年よりも増えるのは間違いないでしょうか。Raspberry Pi 4(かつメモリ8GB)の登場によって、ホビー用途では終わらない利用が考えられるようになりました。IoTとしての利用だけにとどまらず、ラズパイが活躍しそうです。
新しいモデルが登場するかどうかですが、個人的には5が出ると考えています。3Bの発売が2018年3月、4の発売が2019年6月です。ARMはmacOSやモバイル分野での採用も多く、性能が日進月歩で向上しています。ラズパイにおいても、さらに高性能モデルが登場する可能性が高いと考えられます。Jetsonに対抗したGPU強化モデルが出るかも知れませんね。
逆に小型モデルとしてZeroのバージョンアップも期待できそうです。さらなる小型モデルが出ると、M5Stack対抗馬になるかも知れません。低消費電力化が進めば、ラズパイフォン的なモバイル利用も考えられます。
学校などでの採用が進んでいくと、Raspberry Pi財団がWiFiルータを作ったり、学習用コンテンツを配布するためのサーバ用ソフトウェアを開発する可能性があります。インターネットが使えない環境でも、ルータに接続してネットワークが使えれば可能になることが多数あるでしょう。
macOSについては、恐らく奇特な方が実行できるようにするはずです(実用に耐えるかどうかは別として)。
さて、皆さんの2021年予想は?
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