インタビューの時点で藤岡さんは4ヶ月目まで修了されており、今回のキットから得られた手応えや実務への応用イメージを持たれているようでした。
レミーコンサルティングでは、独学力のあるエンジニア、非エンジニア職、新人エンジニアなど、幅広い層にむけてキットの価値を見出しておられました。
AI学習の仕方について疑問をお持ちな方々にはぜひご一読いただく価値のある事例だと思います。
受講したメンバーのご紹介
■ 安倍 栄司さん Co-founder & CEK
レミーコンサルティングのファウンダー兼Chief Executive Konjactant(チーフ エグゼクティブ コンニャクタント)
4次元青ダヌキの持つ某コンニャク+コンサルタントから「コンニャクタント」を造語する洒落好きの経営者。
■ 藤岡 宏紀さん CTK (Chief Technology Konjactant)
レミーコンサルティングのChief Techonology Konjactant(チーフ テクノロジー コンニャクタント)
高い独学力に裏打ちされた技術で機械学習やIoT、ロボットアプリなど、手広く開発する。趣味はスポーツ観戦。
■ 黒部祐基さん UI/UXディレクター
レミーコンサルティング合同会社のUI/UXディレクター。
システム開発時のUI-UXの提案や、ロボットコンテンツのシナリオやデザインなども行う。趣味はDJ、音楽制作。
■「動くプログラムを作って概要をつかむ」非エンジニアのディレクターが掴んだAI学習の進め方
―――まずは非エンジニアの黒部さんがどのように学習を進められたのか聞かせてください。現在はUI/UXのディレクションをされているということですが、プログラミングやAIに関してはご経験はありますか?
黒部:もともとはWebエンジニアで、プログラミング経験はありますが、最近は少し離れていますね。AIに関しては、ロボアプリを開発していたので漠然としたイメージはあるのですが、技術的には多少Pythonがわかる程度です。
なので、学習を進めていく上で、概念的な部分やモデルなどの説明でイメージしづらいところがあったのですが、このキットではドキュメントがしっかりしていましたし、コピー&ペーストするだけでも動くものが作れるので「概念的な部分の理解が出来ていなくても、どんどん進めて、全体を一回見通せるようなところまで到達したら、しっかり理解できてくるんじゃないかな」とおもって学習を進めていきました。
といっても今のところまだ1ヶ月目を終わらせたところなのでそれほどの事は言えないのですが。
―――その進め方は私達の方で考えていたとおりの方法ですね。最初はデータセットや、データポイントとか、いろんなワードが出てきて混乱してしまうと思うんですが、全体一回さらっと流してからもう1回やってみると理解が深まります。詳細が理解が出来ていなくても、まずは進められるようにとカリキュラムを作りました。
黒部:実際わからない単語が山のように出てきますからね。
一個一個の単語の意味を理解するのに精一杯なので、ドキュメントをコピペするだけでも一応動く。という形になっていたのはありがたかったです。
キットを通してやってみることで、AIで出来ること、出来ないことをイメージが具体的になってきたというのはあります。
■エンジニアが独学した成果を俯瞰して確認できる構成
―――藤岡さんはどのようなバックグラウンドをお持ちなんでしょうか。
藤岡:私は機械学習系は仕事で使っていましたが、広義のAIに関しては業務レベルに至っているという自信はないですね。
興味はあったので、書籍やオンライン学習で独学してプログラムを動かしてはいたんですが、どうもよくわからない部分がありました。
―――どういった教材を利用されていたんですか
藤岡:書籍ですとオライリーの機械学習やディープラーニングに関するもの、オンライン学習ではコーセラの機械学習コースなどをやっていました。
(コーセラは、スタンフォード大学コンピュータサイエンス教授アンドリュー・ンとダフニー・コラーによって創立された教育技術の営利団体。世界中の多くの大学と協力し、それらの大学のコースのいくつかを無償でオンライン上に提供している。)
―――基礎からしっかり勉強された感じですね
藤岡: はい。手当たり次第やってみようと思ったら基礎からになっていたのですが、自分の理解が正しいのかに関して自信は持てるほどでは有りませんでした。
安倍:私もそうなのですが、独学だと、自分の身につけた知識が一般的なものなのか疑問が湧いてくるんです。ただ、このキットのように最終的にソリューションを作るところまで進められるものだと、それに必要な知識や技術を体系だって学べます。
その中で自分の学習した内容の足りないところを見つけられるだろうと思ってこのキットを導入しました。
■モデル作成の時間を省略して短時間で学ぶ
―――どのように学習を進められたのでしょうか。
藤岡:実は今回学習をする時間があまり取れなかったので、ゴールデンウィークにまとめてやってしまったんです。1ヶ月あたりを1,2日で終わらせてしまいました。
ただ、そんな無茶が出来たのもこのキットならではかと思います。
今まで独学したときに読んだ参考書だと、まず自分で学習モデルを作るところから始まるんです。
普通に学習モデルを作ろうとなったら、1時間ぐらいはかかります。GANのときには1日がかりだった時もありました。
このキットでは既存のモデルを流用する方法で進めていけたのでAIを動かすところ、独学でカバーできてなかった部分の学習に集中して短時間で進めることが出来ました。
(GAN:敵対的生成ネットワーク、2014年にイアン・グッドフェローらによって発表された教師なし学習で使用される人工知能アルゴリズムの一種)
■トータルでの処理が理解しやすいドキュメントの構成
―――カバーできていなかった部分についてお話されていましたが、具体的にはどのようなところでしょうか。
藤岡:主にテストの部分ですね。書籍やコーセラの機械学習の講座ではテストをするあたりで、で5000枚の画像を分けていたり、シャッフルしたり・・・。
処理としては理解できるけれども何のためにしてるんだろう。と思ってたんです。
今回のAIキットで動くものを作ってみて初めて意味が良く分かったという感じです。
―――ツクレルの教材だとよくわかった。という理由はどういうところでしょうか。
藤岡:黒部も言っていたように、実際にまずは動かしてみる。というところかもしれません。
独学していたときによんでいた教材では、トータルの処理が書かれていないので、「抜粋された各処理」の繋がりが徐々に分からなくなってきて「最終的に何をしているんだ?」と悶々としてしまうんですよね。
このキットでは、実際動かして基礎理論の概要を掴むことができれば、個別具体的な部分に関しては完全に理解できていなくても、ライブラリをつかってどうにかすることができる。ということが体感できました。
実際、今でもCNNやRNNなどに関しては概要は理解できていても、完全につかめたかといえば、自信はありません。
それでも、ライブラリを使えば、形になるものを作ることが出来る。というレベルまで引き上げることが出来たな。と。
■スピード感のある学習から得られる初学者向けのUX
―――キットをやってみた感触としては面白かった点などはありますか?
黒部:まずは自分で手を動かして完成形を作ってから解説するという流れはUXで考えた時に、動線として良かったですね。
一度自分で動かしているので説明がすっと頭に入ってきました。
その過程で、ぼんやりしたイメージだった「AI」というものの中身がわかっていくところは面白かったですね。
実際に画像認識をするところでも「リンゴ」と認識されるだけでも「AIが動いているな。」という感動がありましたし、その中身に関しても、「識別する上で候補となっているものの中でマッチング率の高い『トップ3』から出している」といった仕組みがわかると「なるほど」となりますしね。
間違った場合でもなんか二位には入ってるのをみたら、「これと間違えたんだな」とAIの仕組みを垣間見ることができて、楽しかったです。
■「形あるもの」の中で自分が作ったAIが動く感動
―――藤岡さんはいかがだったでしょうか。一気に出来たというのは、多少ボリューム不足だった感じでしょうか?
藤岡:いえ、今回は連休中しかまとまった時間が取れなかったというだけなのでそんなことはないです。
私はPythonの経験や、今までに独学していた部分もありましたから、理論の所を一から理解しようする人に比べたら大分短縮していたと思いますから、ボリューム的には適切だったと思います。
―――達成感なんかも有りましたか?
藤岡:やはり最後までやり通したときには達成感が有りました。物理的な存在としてタブレットがついたり、UIのあるサービス然としたAIが動いたときには、感動しましたよ。
何度か精度改善にトライして認識できたときには「おぉー!スクワットを認識してる!!やったー!!!」ってなりました。
この後仕事でも、AIで何らかのソリューションを作れるだろうな。という手応えもつかめましたしね。
■AIソリューションのプロトタイピング手法を習得できるキット
―――具体的にはどういったところに手応えを感じましたか?
藤岡:先程言ったように、独学していたときには、学習モデルを自分で作るところから始めていたので、すごく時間がかかっていたんです。
真面目に学習モデル作るとなると毎回データセットを作り、時にはそのパラメーターまで変えなくてはいけない時もありますから。
実際の業務では、「こういう事ができるプロトタイプを作れないか」という相談から始まって、一発目からそれなりに動くものを求められるので、この手法ではコストが掛かりすぎて使えないだろうとおもっていました。
しかし、今回のキットの一ヶ月目で、
「既存の学習モデルを流用して予測をさせて、『このくらいの精度が出ます。』と回答する。」
という一連の流れを習得出来ました。
今回使った姿勢検知や人物検知なども、最近はだいぶ使える学習モデルが増えてきましたし、この手法を使えば学習モデル作成のコストが大幅に減ることを確信できたので「業務に使える」という手応えが持てました。
■AIで出来ることを増やすための第一歩となるイメージ作りに
―――黒部さんは一ヶ月目を終えられててどのような感触が有りましたか?
黒部:私の今の職種的にはAIを使った物をつくる、というのは直近、あまりないのですが、この教材を通してAIで出来ること、出来ないことについて、技術的な確信に基づいた具体的なイメージが出来るようになれば、確実に提案力が上がるだろうなと思っています。
お客様に対して「技術的な土台に基づいた意見交換や提案」や「お客様の隠れたニーズを掘り起こした提案」が出来るようになると思いますね。
■営業職やディレクターの提案力アップに
―――では、「こんな人にオススメしたい」というイメージで言うと、ディレクター職などが思い浮かんでおられるのでしょうか。
黒部:そうですね。あとは受託開発やソリューション提案の営業職の方などでしょうか。
私が聞いたお話だと、かなりざっくりとした依頼を受けることが多いらしいんですよ。
例えば、「施設利用者の満足度を上げるためにARをつかってなにか出来ないか提案をしてください」とか、「入居率を上げるためにIoTを使ってなにか出来ないだろうか」といったような依頼です。
―――ものすごくざっくりとしているし、使う技術と目的がかなりごちゃっとしてますね。
黒部:はい。でも、お客様は事業会社であって、技術の専門家ではないわけで、なんとなくのイメージとアイデアから、形にしていくのは私達のようなコンサルタントや、デベロッパーの役目です。
実際にこういうキットで一度モノを作った経験があれば、そういったざっくりとした相談を持ちかけられた時に「この部分はAIを使えばこういうことが出来ます」と具体的な提案を出せるようになるはずです。
営業職やディレクター職の提案力、営業力に関しては説得力が比べ物にならないでしょうね。
―――必然的に営業成績にもすごい差が出そうですね。
■コピー&ペーストから得られる成功体験で教育効果を高められる
―――藤岡さんはどのような方におすすめしたいですか
藤岡:黒部に言いたいことを先に言われてしまったのですが営業職の提案力向上は向いていると思いますね。
それ以外に、挙げるとするとエンジニアの新入社員にも向いていると思います。
このキットはコピペするだけ動くものがつくれますよね。
私は成功体験が人間の発想や行動の幅を広げていくと思っています。
まずはコピペでもいいから「モノを動かすことが出来た」という成功体験を得てから「この中身はどうやって動いてるのだろうか」というところを勉強していくほうが効率が上がるのではないかとおもいました。
スキルが未熟なエンジニア、新入社員であっても、このキットを使えばだれでもある一定のレベルまでは到達することが出来そうですね。
■独学での行き詰まりを感じるエンジニアにも
―――安倍さんはどのような方を想定されていますか?
安倍:そうですね。先程言ったように体系だった学習法を自分の知識と照らし合わせてチェックしたい。という要望を持っている方は多いと思います。
やはり第三者的な支点での知識の抜け漏れや到達度の評価がないと独学し続けるのは難しいと思います。
でも、最近、AIの開発者が増えてきている、といっても現実的には「ライブラリを叩いているだけ」、という人が多いわけで、理論的な部分を一から学ぶにあたってアドバイスを出来る人ってなかなかいないと思うんですよね。
そういう状況下でこのキットは自分の知識を客観的に見るためになんらかの参照点になるとおもいます
―――確かに、実際に「AIを作ってます」という人は私の知り合いでも数えるほどしかいませんね。いてもどこかの会社の中に完全に入ってやってる方が多いです。そういう状況で、ある程度まで自分で独学をした上で成果を確認したい。という方にもおすすめできそうな気がします。いろんな方におすすめする方向性が見えてきました。
本日はためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。
まとめ
様々な事業会社の要望に対してソリューションを提案、制作していくレミーコンサルティングさん。
新規技術に対する備えを怠らず独学、独習されておられましたが、それだけに自分の到達点を確認したいという要望を強く持たれていたようです。
また、非エンジニアである営業職やディレクター、初級エンジニアにとっても学習メリットを見出していただけたということで、様々な層でAIの学習教材のニーズが高まっていることを感じました。
AIを学ぶにあたって理論的な部分とデータのオペレーション部分のどちらにも、様々な手法や高度な知識を要求されることも影響しているのでしょうか。
そういった分野においてはこのツクレルの教材のように『一つのプロダクトを作る』という目的を持って手を動かしながら一つの技術体系を体感する学習法は実感が湧きやすいのかもしれません。
AIの分野は抽象的な概念が多いため、とっつきにくさを感じる方も多いですが、「作って学ぶAI」であれば、形あるものをつくる過程で知識や理論を『実感できるもの』に落とし込むことができそうです。
これからAI分野の受託開発やコンサルティングなどが増えてきそうだと考え、準備されている方は、ぜひ今回のレミーコンサルティングさんの事例を参考に「作って学ぶAI」の導入を検討してみてください。
聞き手:杉田知至/書き手:梅田正人
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