2024年7月9日にMicrosoftがOpenAIの理事会から離脱すると発表されました。同時期に理事会に加わるとされていたAppleも理事会への参加が撤回されています。これら二大巨頭が理事会から離れていくことは何を意味しているのでしょうか。
1. OpenAIの理事会とは
OpenAIは非営利法人であるため、その経営権は理事会が握っており、理事会は営利企業でいうところの取締役会に相当します。なお、OpenAIは非営利法人のOpenAI, Incのことですが、その傘下にはOpenAIの営利子会社を管理および統治する権限を持つ管理会社であるOpenAI GP LLC、そしてその下に営利法人であるOpenAI Global, LLCも存在しています。またこの営利法人OpenAI Global, LLCはMicrosoftが49%の株式を保有しています。他にも複数の営利企業も傘下にありますが、主要な法人格はこの三つと言われています。非営利法人であるはずのOpenAIがこのような複雑な構造になっていることに批判もありますが、今回の記事では非営利法人のOpenAIの理事会についての話となっております。
2. MicrosoftやAppleの離脱の理由とは
MicrosoftとAppleがOpenAIの理事会から離脱したのは独占禁止法に違反していると見なされることを回避するためだと報じられています。すでにイギリスの競争・市場庁(CMA)は2023年12月に、MicrosoftとOpenAIの提携関係について関係者から意見聴取を行うことを発表しており、欧米の当局が監視の目を強めていると言われています。
Microsoftは理事会には参加していますが、投票権は持たないオブザーバーです。そのため影響力は限定的と考えることもできますが、OpenAIに130億ドルもの投資を行っているため影響力は無視できないでしょう。さらに、当然ながらMicrosoftは生成AIの分野で独自の戦略もあり、OpenAIの理事会に参加することで機密情報を得ることができるため、両者の事実上の独占状態になる可能性は考えられます。このような懸念からMicrosoftが離脱したと考えられており、タイミングを同じくしたAppleも同様の理由だと考えられています。
MicrosoftはOpenAIが理事会を再建している最中にオブザーバーの役割を引き受けました。その後8ヶ月でOpenAIの理事会も新しくなり、会社の方向性にも自信を持てたためオブザーバーとしての限定的な役割は必要なくなったことを、オブザーバーを辞める理由としてMicrosoftは述べています。生成AIを取り巻く環境は常に変化していますが、規制側も常に中止しているため体制や業界のパワーバランスの変化の影響にも気を配っておく必要がありそうです。