8月の日本経済新聞でOpenAIの対抗馬として紹介されたカナダ発の企業Cohereですが、どのような企業か知らない人も多いのではないでしょうか。今回はCohereのサービスや特徴について調べてみました。
1. Cohereとはどんな会社?
Cohereはトロント大学で機械学習を学んだエイダン・ゴメス氏が2019年に立ち上げたカナダのスタートアップです。ゴメス氏は20代の頃にGoogleにインターンとして参加し、その際に現在の生成AIの重要な技術となるTransformerに関する最も有名な論文である「Attention Is All You Need」の共同執筆に携わりました。NVIDIAやOracle、Salesforce、SAPなど著名な大企業からも出資されており、その技術への期待の高さが伺えます。またゴメス氏はエンタープライズ(大企業)向けのプラットフォームが作りたいという思いでGoogleを離れてCohereを立ち上げたことからも、これら大企業との連携を重視していることがわかります。
2. Cohereの特徴とプロダクトは?
Cohereは2024年4月にCommand-R+という生成AIモデルを公開しています。前述したようにCohereは大企業むけのプロダクトを提供することを狙っており、セキュアな環境で、非公開に活用できることやクラウドだけでなくオンプレミスでも使用可能であるとされています。このCommand-R+もローカル環境で活用することもできますし、非商用であれば無料で使用できるようです。その性能はGPT-4と同等とされており、もちろん日本語対応もしているので、ローカルなモデルとして活用できると一般的には制限がされているような言語の生成も可能であるなど活用の可能性が広がりそうです。しかし、大規模なモデルとなっているので動かすためにはそれなりの環境が必要になります。生成AIの価格をすぐに改定されてしまいますが、2024年8月時点では、インプットは1 Mトークンで3ドル、アウトプットは1 Mトークンで15ドルとなっています。
またローカル活用も狙ったエンタープライズ向けということもあり、RAG(検索拡張生成)を活用することも意識されているようです。大企業であれば自社内のドキュメントなどを読み込ませて活用することも多いでしょう。Commandでは内部的に検索クエリを自動的に書き換えるようで、それがRAGの性能にも影響を与えるようです。さらに、検索結果の重要度を順位付けすることで、ハルシネーションを抑えることができるRerankという技術も有しています。
他にも企業での活用を見据え、埋め込み用のAIモデルEmbedも発表しています。
3. 大企業との連携状況
前述したようにCohereは大企業との連携を重視していますが、中でもよく書かれているのはOracleとの連携です。Oracleとの連携ではFusionにAI機能を提供しており、Oracleを通してCohereのテクノロジーが活用できます。また2024年7月には富士通との業務資本提携が発表されています。両社は、CohereのLLMをベースとした日本語強化版である 「Takane」(仮称)(高嶺:タカネ)を共同開発すると発表されており、日本語ユーザーの我々にとっては大きなニュースとなっています。この連携では、「ハルシネーションを軽減するRAGの性能を引き出すことを特徴とし、多言語対応で、一から独自のデータを用い学習を行っているため安全性と透明性に優れたCohere」のテクノロジーを富士通が活用したいという狙いがあるようです。
OpenAIの対抗馬として注目されているCohereですが、エンタープライズ向けに注力しているということもあり、比較的名前を聞く機会が少ない企業となっています。しかし、富士通などの大企業との提携も進んでおり、今後はより我々の身近な存在として、活用できるようになるかもしれません。今後のAIモデルの性能向上にも期待が持てます。