第1回・第2回と、主に未経験者の方向けに3Dプリンターのあれこれを書かせていただきました。最後となる第3回は、3Dプリンターの扱いについて、第1・2回で書きそびれたことと、少しの余談も混ぜて終わろうと思います。
ABS・PLA樹脂の特徴
基本的なことですが後回しになりました。FDM方式の3Dプリンターは基本この2種類の樹脂に対応しています。ABS樹脂とPLA樹脂です。3Dプリントにおいて二者の違いは何なのかを、簡単に説明していきます。
ABS樹脂
ABSは非常に融通の利く樹脂です。強度も柔軟性もあり使い勝手が良いです。しかしABSは熱収縮率の高い樹脂で、温度によって変形し易い性質があるため、接地面の端から反ってきてしまうことがあるのが難点です。造形にはプラットフォームは100℃程度に熱する必要があります。
PLA樹脂
PLAの良い点は「反り」がほとんど無い点です。PLAは収縮率が低く反りにくいので、「反り」に悩まされたらABSの代わりにPLAを使うのがおすすめです。ABSに対してPLAは硬質である反面少々脆い樹脂であるのが難点でしょう。プラットフォームの温度は40℃程度で造形が出来ます。
(3Dプリンターによって適切な設定温度が異なる事があります。)
3Dプリンターがある日常
XSHELLの作業場にも3Dプリンターがありますし、私自身の自宅でも所有しています。実際に動かしていると分かりますが、そこそこ騒音があります。広くて賑やかな部屋であれば気にするほどではありませんが、静まり返っているとその音がとても気になります。実は3Dプリンターの造形時間は結構長いのです。その上モーターがいくつもついていますし、ファンもついていますから、少し昼寝したいときなんかには動いてないことが好ましいでしょう。この程度の音は仕方ないと思わなければなりません。
モーターが複数稼働していることから、稼働時には振動もあります。それなりに丈夫な台の上に設置するのが良いでしょう。あまりに弱々しいテーブルの上だと揺れが気になってしょうがないと思います。
また、少し前の文章でメンテナンスのことを書いたと思います。やはりこれも日常的です。調子が悪くなってきたら調整。この繰り返しです。何度診てあげても様子が変わらない時などは本当に世話が焼けます。トラブルシューティングやメンテナンスはどうしてもしなくてはいけなくなるので、強調していますが、3Dプリンターを使っていくならば。心の準備をしておく必要があるでしょう。
造形物の使いみち
3Dプリンターの造形物を初めて目の当たりにすると、やはり驚きや感激があります。ですが市場に存在する「製品」と見比べると、どうしてもその見た目の劣っているところというのが目につきます。
FDM方式の造形の表面は細かい段々になっているのが分かりますから、3Dプリンターの造形物に見慣れてる人からすれば、チープなものとして映ってしまいます。したがって、自分たちが使う日用品ならともかく、3Dプリンターの造形物がそのまま製品として流通出来るかというと、それは難しいでしょう。
参考として3Dプリンターの造形物と、それを元に加工したものを拡大した写真を以下に並べてみました。
[caption id="attachment_2043" align="alignnone" width="1667"]
3Dプリンターの印刷そのまま。細かいですが、層の段差があります。[/caption]
[caption id="attachment_2044" align="alignnone" width="1667"]
パテ埋めとヤスリがけによる表面処理の途中。[/caption]
[caption id="attachment_2045" align="alignnone" width="1667"]
表面処理をした造形物を元にシリコン型を取り、レジンで成形。[/caption]
プロダクト開発においては、3Dプリンターはあくまでプロトタイピングのツールなのです。大袈裟に言えば、スペースシャトルの切り離し燃料のようなものです。ですが、プロトタイピングにおけるトライ&エラーを3Dプリンターほど高速に行えるツールはそうはありません。
あらゆる試作を短時間のうちに繰り返した後、最終的にそのプロダクトに適した素材や加工方法に置き換わっていくことが理想的な展望といえるでしょう。
最後に
CADや3Dプリンターは私たちのアイデアの実現に大変貢献してきてくれました。私たちにとって非常に重要なツールであり、プロトタイピングのための画期的な発明品だと私は思っています。 最後となりますが、これを読んでくださった方が何か作ろうというとき、この話が参考になっていたなら幸いです。]]>