書籍『実践Arduino! 電子工作でアイデアを形にしよう』(平原真)

(ツクレル編集部より)著者による著書紹介、略して「著著紹介(ちょちょしょうかい)」のコーナーです。今回は『実践Arduino! 電子工作でアイデアを形にしよう』の著者である平原真さんに、ご自身の著書を紹介していただきます。

平原真

こんにちは。はじめまして。『実践Arduino!電子工作でアイデアを形にしよう』の著者、平原真です。今回は著著紹介ということで、本書の3つの特徴をご紹介したいと思います。

  • 初心者目線の構成
  • 作りたくなる楽しい作例
  • アイデアを形にする

執筆のいきさつと自己紹介

私は元々デザインを学んでいましたが、自分の作品にセンサーなどのデバイスを取り入れるために、電子回路を勉強しました。その後、縁があって慶應義塾大学SFCで電子工作の授業を受け持つ事になり、その授業資料を元に本書を執筆しました。

現在は、大阪芸術大学アートサイエンス学科でプログラミングやインタラクティブアートを教えたり、Oggoroggo Productsという屋号で木の玩具を作ったり、電子工作の記事を書いたりしています。

Oggoroggo Products

こんな人に読んでほしい

本書は、電子回路を学び始めた方や、電子回路を作品に応用して発想を実現したい方に向けて書かれています。

私が勉強を始めた時に参考にしたWebや書籍は、ある程度の前提知識がある方に向けて書かれていて、用語や図の読み方などが省略されているために戸惑うことがしばしばありました。また、回路や部品の説明はされているけれど、自分の作品にどうやって取り入れたらいいか分からないという事もありました。

そこで本書は、初心者目線の構成を心がけて書かれています。

  • 「やりたい事」が見出しになっていて、部品の名前を知らなくても目次から探しやすい
  • 初心者のつまずきやすいポイントが丁寧に解説されている
  • 配線図と写真がセットで掲載されていて、対応づけしやすい
  • 通販サイトのURLが掲載されているから、すぐに部品を購入できる
  • 部品ごとに簡単に試せるサンプルが用意されていて、確認しながら進められる
  • 作例では外装の作り方も紹介されているから、完成度の高い作品ができる

作りたくなる楽しい作例

本書には作りたくなる楽しい作例が5つ掲載されています。電子回路の説明はもちろん、外装の作り方についても、詳しく紹介しています。電子工作で何ができるか分からないという方は、これから紹介する作例を眺めて、興味をひかれる作品を探してみてください。

作例1「鼓動を感じるたまご」

大きな卵に両手を触れると、中からドクンドクンと心臓の振動が伝わってくる、という作品です。「生き物らしさ」を表現しています。

卵は3Dプリンタで造形しています。内側に非接触で人体を検知できるセンサーを2箇所に設置し、両手で触ったときに、電磁石で金属の棒を動かして振動させています。

https://youtu.be/W92ejW7vLgw

作例2「バースデイケーキシミュレーター」

ろうそくを3本ケーキに差し込んでから息を吹きかけると、ハッピーバースデーの曲が流れます。

ろうそくの穴の中には、物が近づいた事が分かるセンサーが入っています。息の吹きかけは、マイクを使って検知しています。

https://youtu.be/FdJi8nn1zio

作例3「カラーピッカー」

カラーセンサーを使って物の色を読み取り、パソコンのソフト(Processing)と通信して、読み取った色で絵を描くことができます。下の動画では印刷したカラーチャートを使っていますが、バナナでも消火器でも好きな物から色を読み取ることができます。

https://youtu.be/4TuFcdJptco

作例4「ボール転がし」

実物の迷路を傾けると、画面の中も同じように動き、ボールが転がります。実物で全体を確認しながら、ゴールを目指すゲームです。

実物の迷路の中には加速度センサーが入っていて、傾きを検知します。パソコンのソフト(Unity)と通信し、Unity内の迷路を実物と同じ角度に傾けます。Unity内の迷路とボールは物理演算で動くようにしています。

https://youtu.be/qugMCBsA2RI

作例5「トイレ見守り鳥」

鳥の巣箱の中には人の動きを検知するセンサーが入っていて、トイレに人が入ったら、Twitterにツイートします。巣箱の作り方も紹介しています。

https://youtu.be/yvOXXRPFQzg

コラムの紹介

本書にはメインの電子工作の説明の合間に、制作に役立つ情報や、プロジェクトを進めるコツをコラムという見出しで掲載しています。いくつかご紹介したいと思います。

素人のプロになる
専門外のことでも、まずは自分で調べて試してみましょう。時間がかかったり失敗しても、素人ですからあたりまえです。その経験を持って専門家に協力を仰ぐことで、質問が明確になり、前提条件の説明が不要となるため、より深いレベルで知識を共有できるようになります。また、新しい技術の学習を繰り返すと、未知のものに対応する能力も鍛えられます。

寄り道をする
あるアイデアの裏には、選ばなかった多くの選択肢があります。それらを捨てずに残しておき、メインの制作が一段落したら、ちょっと寄り道してみましょう。メインのアイデアを別の視点から捉えたような作品ができれば、シリーズとしての厚みが出ます。逆に寄り道があまり面白くなければ、メインのアイデアを選んだことが正解だったと確信できます。

詩的な電子工作
10 年以上前になりますが、カラーセンサーで読み取った色をフルカラーLEDで表示するRGBy(ルグビー)という作品を作ったことがあります。桜の花びらから読み取れば桜色のライトになり、デジタルで制御されたLEDの色でも、読み取ったものに対する思いによって豊かな気持ちになれるのではないか、というコンセプトでした。また、Section 1.1でも紹介しているGoomay(寓命)という作品は、太陽電池で発電した電気でマイコンを動作させ、生命活動を表現したプログラムに従ってLEDを光らせることで、太陽のエネルギーで活動する地球の生命を表現しました。電子部品の機能性の上に、自分の視点で新しい意味を付加することで、電子工作は世界の捉え方を表現するアート作品になると思います。皆さんも電子工作で自分の思いを表現してみてはいかがでしょうか。


本書は電子回路や電子部品についての技術書ではありますが、コンセプトやデザインまで含めたアイデアを形にするお手伝いをしたいと思って書きました。本書で紹介した作例やノウハウが、みなさんのお役に立てば嬉しいです。

ご購入はこちらから

長文お付き合いいただき、ありがとうございました。電子工作と本書に興味を持っていただけたら幸いです。

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実践Arduino!電子工作でアイデアを形にしよう

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