OpenAIを筆頭に大規模言語モデル(LLM)開発は世界一の注目分野となっています。その中で日本のスタートアップである株式会社ELYZA(イライザ)も負けていません。KDDIとの資本業務提携など日本として最先端のAI開発を行う体制が構築されつつあります。このELYZAとはどのような企業なのでしょうか。
1. 株式会社ELYZAとは?
ELYZAは未踏クリエイターであり、東京大学松尾研究室を卒業した曽根岡侑也氏によって2018年に創業されました。会社名は1、966年にジョセフ・ワイゼンバウムによって開発された世界初のチャットボットといわれる自然言語処理プログラム「ELIZA(イライザ)」に由来しているそうです。そしてなんと言っても特徴は日本語に特化したLLMのモデルを開発していることです。LLMの開発には当然ですが多くのデータが必要になります。OpenAIなどのLLMも日本語には対応していますが、どうしても英語の開発が先行しているようにも感じます。やはり日本語が母語の人にとっては日本語のLLMこそ活用したいものです。2024年3月12日にELYZAは日本語の生成能力が「GPT-4」「Claude 3 Sonnet」「Gemini 1.5 Flash」などのグローバルモデルを上回る、国内最高水準の700億パラメータのLLM「Llama-3-ELYZA-JP-70B」を開発しました。このモデルはMeta 社の「Llama 3」シリーズをベースに日本語で追加学習を行うことで開発されています。ゼロからLLMを開発したわけではありませんが、オープンソースのLLMを活用することで開発スピードを上げることも戦略としています。
2. KDDIとELYZAの関係は?
多くの期待を集めているスタートアップであるELYZAですが、実は現在はKDDIの子会社となっています。2024年4月1日をめどにELYZAの株式をKDDIが43.4%、KDDI Digital Divergenceが10.0%保有することでKDDIの連結子会社としました。ELYZAの持つLLMの技術とKDDIの大企業のリソース活用というWin-Winの提携となります。一般的にはスタートアップのEXITの一つとして大企業による買収がありますが、今回の関係は少し変わっています。
KDDIはスタートアップ買収のパターンとしてスイングバイIPOという新しい概念を構築しています。一度、大企業に買収された後に、大企業のリソースを活用して、さらに企業として成長させ、再び大企業から離れてIPOを目指す手法です。スイングバイとは宇宙探査機が惑星の重力の力を借りて加速させる手法で、大企業を惑星に見立てて、スタートアップの成長戦略の一つとして考えられています。先行事例としてソラコムがあります。ソラコムも2017年に一度KDDIに買収された後に、2024年にIPOを果たしました。スタートアップとしては独立してIPOを目指すことが主流ですが、すでに事例もあることでELYZAもスイングバイIPOという新しい方法も受け入れやすくなったのではないでしょうか。LLMの開発には多くのリソースが必要となるため、大企業の力を借りて、さらに発展していくことを願います。
スタートアップは国家戦略としても力が入れられており、今回の提携のように大企業も積極的な連携を始めています。生成AIの分野はホットな領域なので、これからも注目ニュースが多く出てきそうです。