【用語解説】RAG(検索拡張生成)とは?

RAG(検索拡張生成)はRetrieval-Augmented Generationの略で、Retrievalは「検索・抽出」、Augmentedは「補強・拡張」、Generationは「生成」を意味します。つまり、RAGは外部情報を抽出し、それによってモデルの知識を補強して応答を生成する技術です。RAGは、大規模言語モデル(LLM)の出力を強化する技術であり、LLMのトレーニングデータソースに依存せず、信頼できる外部の知識ベースを参照して応答を生成する方法です。この技術により、生成AIの知識を補強し、より正確で関連性の高い情報を提供できるようになります。本記事ではRAGの基本的な仕組み仕組みと活用方法について解説します。

RAGの仕組み

RAGは2つの主要なフェーズで構成されています。

  1. 情報の検索:まず、質問に関連する情報を外部のデータベースから検索します。このフェーズで、適切かつ最新の情報を取得することができます。RAGの効果をさらに高めるためには、データのベクトル変換を活用することも有効です。ベクトル変換とは、テキストデータや質問を数学的な数値ベクトルに変換するプロセスで、これにより文書や質問の意味や関係性をモデルが理解しやすくなります。ベクトル変換を活用した検索では、ユーザーの質問やデータベースとなる文書をベクトル表現に変換し、それらのベクトル間の類似度を計算することで最も関連性の高い情報を検索します。この手法により、RAGは文書内の意味をより深く理解し、より高精度な検索による情報取得を可能にします。他の方法としてキーワード検索もあります。ただし、複雑な問いに対して適切なコンテキストを持つ情報を見つけるのが難しく、回答の精度が低下することが多いです。また、開発者は手作業でデータを準備する必要があり、単語の埋め込みや、文章を意味ある単位で分割するチャンク化などの複雑な作業に直面します。一方で、ベクトル変換を利用することで、RAGの情報検索プロセスが大幅に効率化され、関連性の高い文とトークンワードを適切に生成し、回答の品質を最大化することが可能です。
  2. 回答の生成:取得した情報を、LLMに対して質問や指示のプロンプトと共にAIに与えます。それによりAIが回答する際に、検索で抽出した情報を活用することができます。このプロセスにより、独自のデータベースに基づく解答を生成することも可能になり、さらに生成される回答の正確性と具体性が向上します。

RAGのメリット

RAGは、大規模言語モデルの持つ従来の限界を克服します。たとえば、LLMが一般的な情報しか提供できない状況でも、RAGは特定の業界や企業固有のナレッジベースを利用し、より的確で応用可能な情報を提供します。特に、以下の業界で強力な効果を発揮します。

  • 金融業界:リスク管理や投資判断の精度向上
  • 製造業:生産計画の最適化や品質管理
  • 流通業:サプライチェーンの効率化
  • 小売業:顧客購買データに基づくマーケティング戦略の強化
  • カスタマーサポート:迅速かつ的確な応答の提供
  1. 意思決定のスピードアップ:LLMは学習したデータの範囲内の回答となりますが、RAGは、データを与えることで最新の情報に基づいた分析や提案を迅速に提供するため、意思決定のスピードを大幅に向上させます。市場の変化や競合の動向に関する最新情報をタイムリーに取得できるため、即応性が高まります。
  2. 顧客サポートの強化:顧客からの問い合わせに対し、内部データを活用し、常に正確で最新の情報を提供することにより、カスタマーサポートの品質を向上させることが可能です。特に製品の仕様変更やアップデートに関する問い合わせに対しては、迅速かつ正確な応答が顧客満足度の向上につながります。
  3. リサーチ効率の向上:膨大なデータから必要な情報を見つけ出すには多大な時間がかかりますが、RAGは自動的に関連性の高い情報を抽出し、それに基づいて適切なレポートを生成します。これにより、リサーチにかかる時間を大幅に削減し、効率的な情報収集が可能になります。

ChatGPT Searchとの違い

ChatGPTにはWeb検索の機能もついています。学習データの範囲内だけでなく、外部データに対して検索して抽出したデータも活用して回答を生成するプロセスはRAGと共通していると言えます。しかし、一般的にRAGという文脈では、Web上の情報よりも、社内などの特別なデータベースを活用する場合が多いです。またRAGはキーワード検索やベクトル検索など、検索方法にも様々なやり方で実装することができます。抽出する情報も文章の全てをそのまま用いるのではなく、有用な情報に優先順位をつけ、より効果的な抽出を行う方が望ましいです。また、Web上の情報は有用なものから、間違った情報が載っているものまで様々です。それに対して、自らが構築したデータベースであれば質の高い情報だけを入れておけるため、それだけ生成AIからの回答も正確で質が高くなります。

まとめ

RAGは、「検索」と「生成」を組み合わせることで、AIの応答能力を大幅に向上させる技術です。この技術により、ビジネスにおいては信頼性の高い情報を元に迅速な意思決定が可能となり、競争力を大幅に高めることができます。RAGの活用により、ビジネスの競争力を高め、顧客満足度の向上にも大きく貢献できるでしょう。

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