2024年12月、OpenAIは「12 Days of OpenAI」と題し、12日間連続(営業日)で新機能やモデルの発表を行いました。このイベントは、年末の技術界における最大の話題の一つとなり、特にAI技術の進化を追求するビジネスパーソンや開発者に注目されました。OpenAIは、この期間中にAIの応用範囲を広げる新しいツールやサービスを紹介し、実際の業務や日常生活にどのように貢献できるかを強調しました。この記事では、各日の発表内容とその影響について詳しく解説します。
発表内容のまとめ
日付 | 発表タイトル |
12月5日 | 新モデル「o1」の正式リリースと新有料プラン「ChatGPT Pro」の導入 |
12月6日 | 強化学習によるファインチューニング研究プログラムの拡大 |
12月9日 | 動画生成AI「Sora」の正式展開 |
12月10日 | 新機能「Canvas」の全ユーザーへの開放 |
12月11日 | SiriやApple IntelligenceがChatGPTと連携開始 |
12月12日 | Advanced Voice Modeに新機能追加 |
12月13日 | 新機能「Projects」の導入 |
12月16日 | ChatGPTの「Search」機能を無料ユーザーにも提供 |
12月17日 | AIモデル「o1」のAPIや開発者向け機能の公開 |
12月18日 | ChatGPTが電話とWhatsAppで利用可能に |
12月19日 | Mac版ChatGPTアプリがコード・文章作成アプリと連携 |
12月20日 | 次世代推論モデル「o3」と「o3-mini」の発表 |
各日の詳細
12月5日: 新モデル「o1」の正式リリースと新有料プラン「ChatGPT Pro」の導入
新モデル「o1」は、o1-previewとして先行公開されていたモデルの完全版で、コーディング、数学、科学的推論で性能が大幅に向上しました。o1-preview比で、回答速度が50%向上し、重大なミスを起こすリスクが34%減少しています。また画像のアップロードも可能となり、マルチモーダルな分析ができるようになりました。それにより、研究者やエンジニアの作業効率を飛躍的に向上させるツールとして注目されています。同時に発表された有料プラン「ChatGPT Pro」は月額200ドルで、o1やo1 Proへの無制限アクセスを提供します。o1 Proでは時間をかけて、より複雑な問題を解くことができるようになっています。
12月6日: 強化学習によるファインチューニング研究プログラムの拡大
特定タスクに特化したモデルを作成する「強化学習ファインチューニング(RFT)」プログラムが開始されました。経済界や研究機関を対象にしており、科学研究、金融、法律など複雑なタスクを持つ企業や研究機関からの参加を募集しています。
12月9日: 動画生成AI「Sora」の正式展開
テキストから高品質な動画を生成するAIモデル「Sora」が公開されました。たとえば、教育分野では授業内容を視覚化した教材動画を簡単に作成でき、マーケティングでは製品説明や広告用の短編動画の自動生成が可能です。また、クリエイターはストーリーのアイデアをテキストで入力するだけで、プロトタイプ動画を短時間で制作できるため、制作時間とコストの大幅な削減が期待されています。ChatGPTとは異なるサイトで使用できます。<https://sora.com/> ChatGPT PlusやChatGPT Proのユーザーなら追加料金なしで使えます。
12月10日: 新機能「Canvas」の全ユーザーへの開放
Canvasは文章エディタ領域が搭載され、ChatGPTとの共同作業を効率化できます。また、Pythonや他のプログラミング言語の開発など、技術者や開発者にとっても有益なツールとなっています。しかもPythonはCanvas内で直接コードを実行できるようになりました。Canvasについてはこちらの記事でも紹介しています。
12月11日: SiriやApple IntelligenceがChatGPTと連携開始
AppleのiPhone、iPad、MacのPCでSiriからChatGPTが使えるようになりました。Apple Intelligenceが利用できる最新OSに対応している機種でのみ連携が使用できます。Apple Intelligenceや連携についてはこちらの記事でも紹介しています。
12月12日: Advanced Voice Modeに新機能追加
音声モードでのビデオ通話やスクリーン共有が可能になりました。これにより、ChatGPTに顔を覚えてもらったり、目の前の状況をリアルタイムに説明してもらうような使い方ができます。この機能を活用すればリモートワークや教育の現場でのAI活用が加速することも期待できるでしょう。
12月13日: 新機能「Projects」の導入
複数のチャットや関連データを統合的に管理できる新機能「Projects」が発表されました。またChatGPTの設定もプロジェクトごとにできます。同じような作業をする場合に、毎回設定したりファイルをアップロードする手間がなくなり、管理も楽になります。
12月16日: ChatGPTの「Search」機能を無料ユーザーにも提供
今までは有料機能でしたが、無料版のユーザーにも「Search」機能が公開されました。これにより誰でも最新情報の検索が可能になり、財経情報や研究ジャーナルの抽出が容易になります。この機能は、AIが情報収集の主要なツールとしてさらに普及することを期待されています。さらに音声検索もできるようになりました。
12月17日: AIモデル「o1」のAPIや開発者向け機能の公開
開発者向けに「o1」のAPIが公開されました。これにより、カスタムアプリ構築の可能性が広がり、ビジネスや教育現場でのAI導入がより容易になります。さらにAdvanced Voice ModeのAPI版のアップデートやPreference Fine-Tuningという良い回答と悪い回答を比較してチューニングする手法についても発表されました。
12月18日: ChatGPTが電話とWhatsAppで利用可能に(アメリカ限定)
アメリカ限定ですがChatGPTのフリーダイヤルが公開されました。利用料金なしでChatGPTと会話することができます。さらにWhatsAppによるメッセージのやり取りにも対応しているとのことです。
12月19日: Mac版ChatGPTアプリがコード・文章作成アプリと連携
MacOS向けのアプリに新機能が追加されました。NotionやXcodeとの連携ができるので、文書生成やコード生成も格段に楽になるでしょう。音声でChatGPTの外部アプリの操作もできるようになります。
12月20日: 次世代推論モデル「o3」と「o3-mini」の発表
「o1」の後継モデルとして「o3」が発表されました。複雑なタスクの対応性が向上し、大規模なデータ解析や高度な問題解決が可能になります。ARC-AGIというAI向けのテストで今までのモデルでは良い成績を残せていませんでしたが、o3は人間に迫る結果を残しています。現時点では最もAGI(汎用人工知能)に近いモデルと言えるでしょう。公開は2025年の第一四半期を予定しています。
まとめ
OpenAIの連続発表は、AIの展望を再確認させ、新たな機会となりえることを示しています。特に「Search」機能の全ユーザーへの開放や「Projects」の導入は企業で最新情報を使用する方法や開発する方法を大きく変える可能性を引き出しました。また、新たなモデル「o1」や「o3」は、AI活用の幅をさらに広げる可能性を秘めています。
これらの進展により、AIがもたらす価値は単なる効率化に留まらず、ビジネス戦略そのものを根本から再定義するツールとしての重要性が増しています。特に教育、マーケティング、リモートワーク、クリエイティブ産業での応用が期待されています。たとえば、教育分野ではカスタマイズ可能な学習プログラムや効率的な授業運営が可能となり、マーケティングではターゲット層に応じた高度なデータ分析が実現しています。うまく利用できれば世界の産業界における競争力を強化する大きな一歩となるでしょう。