ロンドン証券取引所に上場するRaspberry Piの会社とはどんな会社?

2024年6月11日にRaspberry Piを開発しているRaspberry Pi Holdings plcがロンドン証券取引所で新規株式公開(IPO)をし、上場することとなりました。多くの場所で愛されているRaspberry Piですが、Raspberry Pi Holdings plcとはどのような会社なのでしょうか。

1. Raspberry Pi Holdings plcと関係のある企業・機関

Raspberry Piの開発に関わっている企業・機関にはRaspberry Pi foundation(Raspberry Pi 財団)と言う非営利団体と、Raspberry Pi Ltd.と言う営利企業がありました。まず2008年にRaspberry Pi foundationの理事会が設立され、2009年に正式に登録慈善団体として設立されました。そして2012年にRaspberry Pi Ltd.はRaspberry Pi 財団の完全子会社として設立されました。Ltd.はイギリスの会社の形態を示すものでA private limited companyを意味します。日本語では非公開有限責任会社となります。一方でplcはA public limited companyを意味し、公開有限責任会社となります。株式上場を行うということは株式を公開することになるため、会社の形態を変えました。
また上場の前に、Raspberry Pi Ltd.は複数の企業から資金調達を行っています。2023年にはソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社とArm Holdings plcから資金調達を行っています。Raspberry PiはARMプロセッサを搭載していたり、ソニーグループが製造を担っていたりと元々関係の深い企業から調達を行うことで、資本と業務の両側面で連携を果たしました。

2. 上場による資金調達の見通し

IPOでは会社の評価額は5億4200万ポンド、株価は1株あたり2.80ポンドと設定されました。上場後に株価は32%上昇して3.70ポンドとなりました。この上場でRaspberry Pi Holdings plcは2億ドル以上の資金調達を行うとされています。元々の株主であったRaspberry Pi 財団は非営利団体ですので、株の売買で利益を得ることを目的としてはいませんが、株式の一部を売却し、それにより得られた資金で、世界中の教育プログラムに資金を提供し、コンピューティングの民主化と、デジタルリテラシーの向上を行うとしています。一方、ARMは上場を通じて株式の保有比率を増やす予定のようです。会社間のシナジーが強い場合は、このタイミングで売却せずにより強固な関係性を持ちたいと考えることもありますし、世界の産業用Raspberry Piの市場規模は2026年までに3億8500万ドルに達すると予想しているレポートもあるため、今後の成長への期待としてさらに投資を行うとも考えられます。Raspberry Pi Ltd.の2023年度(2023年1~12月)業績は売上高が2億6580万ドル、営業利益は3750万ドルだったため、まだ成長の余地は見込めます。Raspberry Piの製造販売だけでなく、TAM(Total Addressable Market)で考えると212億ドルとも推定されており、類似製品であるArduinoの市場やRaspberry Piの応用も含めた市場までビジネス展開がされると事業規模はさらに拡大されることとなります。

日本でもRaspberry Piは各所で活用されていますが、近年はSTEM教育は盛んに行われるようになっており、その中でもRaspberry Piは中心的な役割を果たしています。今後は株式が公開され市場からの成長の期待も大きくなるため、一層ビジネスが拡大するスピードも上がると見込まれます。それに伴ってRaspberry Piもより身近な存在になっていくでしょう。ピクアカではRaspberry Piを学ぶための教材も提供しており、入門編は無料でもご提供していますので、この機会にご活用ください。

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